雪崩発生の前兆現象と種類別の特徴

雪崩発生の前兆現象と種類別の特徴

雪崩、特に積雪全体が滑り落ちる全層雪崩は、しばしば特有の「前兆現象」を伴います。

これらのサインを見逃さないことは、雪崩災害から身を守るための最も重要な心得の一つです。

1. 雪庇(せっぴ)と巻きだれ

雪庇(せっぴ)は、山の尾根や稜線から風によって雪が吹き付けられ、長く張り出した状態を指します。また、人工物の雪崩予防柵などから雪が張り出しているものを巻きだれと呼びます。

  • 危険性: 張り出した部分が自身の重みで崩落すると、その衝撃がトリガーとなって大規模な雪崩(特に全層雪崩)を引き起こす危険性があります。雪庇の下を通過することは非常に危険です。
  • 視覚的特徴: 尾根がナイフのように鋭利になっている場合や、青空を背景に雪が大きくせり出している場合は要注意です。

2. クラック(雪の裂け目)

クラックは、雪面にひっかき傷のような亀裂雪の割れ目が現れる現象です。

  • 危険性: これは積もった雪が地表面に対して少しずつ動き出そうとしている状態を示しており、この動きが大きくなると一気に全層雪崩へ発展する前触れとなります。
  • 発生時期: 特に春先や気温が急に上昇した時など、雪の層の結合が緩む時期に現れやすいサインです。

3. 雪しわ(雪面のシワ)

雪しわは、雪面にふやけた指先のようなシワ状の模様が現れる現象です。

  • 危険性: クラックと同様に、積雪が緩み、ゆっくりと動き出していることを示す現象です。雪の量が少ない斜面でも発生することがあり、全層雪崩につながる危険なサインです。

4. スノーボール(雪の塊の落下)

スノーボールは、斜面をボールのような雪の塊がころころと転がり落ちてくる現象です。

  • 危険性: これは、雪庇やクラックなど、斜面の上部で既に雪の崩壊が始まっていることを示しています。スノーボールが頻繁に見られる場合は、その斜面や上部斜面で雪崩が間近に迫っている可能性が高いため、直ちにその場から離れる必要があります。

⚠️ 注意点:表層雪崩には前兆が少ない

一般的に、上記のような前兆現象は全層雪崩で多く見られます。一方、厳冬期に新雪層が滑り落ちる表層雪崩は、前兆現象を伴わずに突然発生するという特徴があります。

そのため、短時間での強い降雪後や、冷え込みが続く時期には、視覚的なサインの有無にかかわらず、雪崩危険斜面への立ち入りには最大限の警戒が必要です。

これらの前兆現象を確認した場合、または雪崩が発生しやすい気象条件(急激な降雪・昇温・降雨)にある場合は、その斜面に衝撃を与えないように細心の注意を払い、迅速に安全な場所へ退避することが、命を守る行動となります。

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