バックカントリー春の魅力!! フィルムクラスト 

今日は、フィルムクラストについて紹介しようと思います。

ノートラックパウダーを引き当てるより難しい⁉フィルムクラストとは


「フィルムクラスト(Film Crust)」は、主に春先のバックカントリーで見られる、特定の気象条件が重なることで発生する非常に薄い氷の膜のことです。その名の通り、雪の表面にセロファンのような薄い氷の層が形成される現象で、滑走者にとっては独特な感覚と音を楽しめる雪質として知られています。

1. フィルムクラストの形成メカニズム

フィルムクラストは、日中の気温が上昇し、夜間に急激に冷え込むという、春特有の大きな日較差がある場合に形成されます。

  • 日中の融解: 強い太陽の光(日射)により、雪の表面が溶けて水になります。
  • 夜間の凍結: 融けた水が夜間の強い放射冷却で急激に冷やされ、薄い氷の膜(クラスト)として再凍結します。
  • 薄い膜の形成: このクラストが、まるでフィルムのように非常に薄く、もろい状態になっているものを特に「フィルムクラスト」と呼びます。

この現象は、天気が穏やかで晴天が続き、昼夜の気温差が大きいことが条件となります。

まさに気候も安定し暖かい春頃狙い目です!

2. 滑走における特徴

フィルムクラストは、その独特の性質から、バックカントリーでしか味わうことは出来ません。

バックカントリー限定のシーズン最後の極上デザートのようなものです。

  • 独特の滑走感と音: 板が滑るたびに薄い氷の膜が「シャリシャリ」「パリパリ」割れる独特の音が発生します。
  • 板の走り: 氷の層が割れることで雪との摩擦が減り、板が非常によく走る(スピードが出る)状態になります。
  • 視覚的な美しさ: 氷の膜が太陽の光を反射し、斜面全体がキラキラと光り輝くように見えます。

このフィルムクラストは、パウダー(新雪)とは全く異なる魅力を持つ雪質として、一部の愛好家にはパウダーよりも好まれることもあります。

ただし、フィルムクラストが安定して楽しめるのは、非常に限られた時間帯や斜面であることが多く、タイミングを合わせるのが難しいとされています。

3. 雪崩との関連性(クラスト一般の危険性)

フィルムクラスト自体は極めて薄い表層の現象であり、直接的な雪崩の引き金になることは少ないと考えられます。しかし、クラスト全般(氷の層)が雪崩と関連して危険な役割を果たす場合があります。

  • 弱い層の形成: 表面のクラストではなく、積雪の内部に存在する硬い氷の層(インナー・クラスト)が問題となることがあります。この硬いクラストの上に降った新雪や雪が、クラストとの結合が悪く、その層を境に滑り落ちてしまう(表層雪崩)原因となることがあります。
  • 温室効果: 表面に張ったクラストが温室のビニールハウスのような役割を果たし、クラストの下の雪が溶けやすくなる現象も指摘されています。これが進むと、雪の層の間に空洞ができたり、緩んだ雪の層が形成されたりして、雪崩の不安定性を高める要因となりえます。

バックカントリーを楽しむ際は、フィルムクラストの滑走を楽しむ一方で、積雪内部の弱い層の有無や、全層雪崩の兆候にも常に注意を払うことが重要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました